闘病生活覚え書き

 これほど、お気楽な性格が功を奏したことはないでしょう。けっこうな大手術だったらしいのですが、本人にその自覚はあまりありません。まわりの方々には、かなり心配していただいたようなんですが、これまた、本人には風邪をひいたぐらいの感覚しかありません。確かに、腫瘍が良性か悪性かでこれからの人生も大きく変わってしまうわけだったのですが、「悪性だったらどうしよう・・・」などと、悩むことも全くなく「この先、私の人生はどうなってしまうのだろう・・・」と不安に駆られることもほとんどありませんでした。
 思い起こせば、手術後は腰痛と鼻から入れられていたチューブとの戦いでした。腰痛で夜も寝られず、痛み止めの日々。鼻チューブが呼吸の不快感を増大させます。脊髄麻酔で手術のいたみが全くなかったのが幸いしました。動けるようになると腰痛も次第になくなってきました。
 次にやってきたのが、「たん」との戦いでした。咳ができないのです。正確に言うと、咳をすると傷口に激痛がはしりとても苦しいのです。
 そん中、妹夫婦が持ってきてくれたゲームボーイADがとても入院生活を楽しいものにしてくれました。
 手術後1週間ほどすると、食事が始まりました。最初はお粥の汁でした。食欲もあまりなかったので、特に味の方も「こんな物か」程度にしか感じませんでした。次第にご飯も固くなっていきました。食欲は依然として無いのですが、それに拍車をかけているのが、病院食のまずさです。臭いがダメでした。食事の時間になると漂ってくる、独特の臭いで、一気に食欲が無くなりました。1階の売店にウィーダーインゼリーや、プリンをよく買いに行きました。なぜかこんな物ならたくさん食べることができました。そして、体重もぐんぐん減っていくのでした。
<つづく>